製本WSを終えて

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12月22日に「紙と本を楽しむ会」で糸かがり製本のワークショップを行いました。

約2時間で『銀河鉄道の夜』をはん・ぶんこサイズの本に仕立てるという、単発のワークショップとしてはかなり冒険的なことを試みですが、参加された方がみな熱心に取り組んでくださって、なんとか無事に終えることができました。

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ワークショップをやるたびに何か欲が出て、だんだんと盛りだくさんになってきています。

これが良いことなのかどうなのかは自己評価ではなく、参加された方が満足してくださるかどうかによることなのですが、ありがたいことに好意的な評価をしてくださる方が多くて、ホッとしています。

まえにも書いたのですが、わたしは、他でもできることや、他の人がやっているのとおなじワークショップはしない、というくらいのことをやりたいと考えています。具体的には、「本でない状態から本のカタチに仕立て上げる」ことをします。元々本のカタチのものを表紙をつけ替えるとか、ナカミがない束見本みたいなものを作りたいとは思わないのです。

「本でない状態から本のカタチに仕立て上げる」とは、ナカミが印刷された紙を折ったり、切ったりして折丁を作り、綴じるための穴を開けて、表紙と一緒に糸でかがるという一連の工程を言います。ナカミを印刷するための手間を考えたら、白紙のノートの方が何倍もラクです(準備する側も、参加する側も)が、それは書物とは呼べないので(相当な頑固者ですね)。

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今回、ワークショップの依頼をいただいて、最初はいつものように洋古書の絵本を仕立てようかと考えていました。

でも、作るだけで終わらせたくないし、実際に読んでもらえそうなものはなにかと考えたとき、主催者のまんまる〇さんが『銀河鉄道の夜』がお好きで、またそのイメージの作品を作っていることを思い出し、ならばと思い立って作業に取りかかりました。ワークショップの10日前のことです。

InDesignでむかし作ったレイアウトを見直して(縦書きのものは殆どなくて、流用できそうなものがなかったのです)、テキストフレームの位置とサイズを設定し、青空文庫のテキストを流し込んで、仮に印刷・製本して・・・

テキストのサイズや行間は前に作ったものでちょうど良いかなと、段落スタイルはそのまま流用しました。本のサイズが文庫本の半分ですが、あまり小さすぎて読みにくくなるのは避けたかったので、まぁ大体このくらいで大丈夫かなと。ルビが入るのでそれが読めなくなっては意味がないですし。文字のサイズは12Qで、さほど小さいとは感じないのではないかと・・・

まず、単純にテキストを流し込んだだけのものを印刷、製本してルビの部分に印をつけていきます。直接書き込んだり、入力の後でチェックを入れるので、この作業は紙媒体で行います。仕上がりと同じカタチの方が作業はしやすいので、「はん・ぶんこ」の本にするのです。

糸でかがってあって背表紙がない、この造本様式は仕上がったときよりも、むしろこのチェック作業時にとても力を発揮します。どのページも平らに開くので、書き込みがしやすい、大きすぎないので、作業スペースが狭くても大丈夫、なんなら電車の中でも邪魔にならないし。ポケットに入れて持ち歩くのにも便利。良いことづくしです。

紙でのチェックを終えたら、InDesignでひたすらルビをふる作業をします。もともとのテキストでは漢字のすぐしたにルビがあるので、ルビの部分を切り取り、該当する漢字を選択して、ルビの設定をして貼り付ける(なんだか訳が分からないことを書いていますね)という作業を延々と・・・なんだかんだで半日ぐらいやっていたかも。で、よくあることですが、後で見落とした部分に気づくという・・・

ルビを設定した状態でもう一度印刷、製本してもう一度チェック作業を。見落とした部分を再度修正して、金曜日の午前中に必要な部数(10枚×予備を入れて14セットで140枚!)印刷しました。

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月いちでやっているワークショップは、毎回同じようなことをするので、印刷したものをそのまま持って行って、参加者が折って折丁を作ることから始めます。ただ、今回の単発WSではこれをやると時間のロスになる可能性が高いため、どうしようか悩みました。

最初に4つに切り分けて順番にそろえておいても良いし、なんなら折って穴を開けておいても良いのですが、できればそれはしたくありませんでした。

下準備を済ませた状態で、「綴じ」だけやってもらうのも一つの方法ではあるのですが、それではいけない(やっぱり頑固者ですね)と、心を鬼にして(!)折り(の一部)と穴開けの工程は当日その場でやってもらうことにしました。

1枚の紙を3回折るとA7サイズになるのですが、一回目の折りを終えた後、二回目の折りは切り離すことにしました。で、三回目の折りだけ当日やったわけです。もともとがA4の紙であった痕跡が残るように。でもこのことは説明する余裕がありませんでした。

「はん・ぶんこ」はA4用紙の1/8サイズです。本を作る際に気をつけなければいけないのは、紙の繊維の流れ「紙目」なのですが、A7サイズの本を作る場合、A4「横目(Y目)」の紙を使います。この場合、一回目の折りは抵抗なく素直に折ることができます。二回目の折りは逆目になるので、折りにくくなるのです。このサイズの本だと、折りのズレやシワが気になることもあるので、ここで断裁してしまうのです。三回目の折りは順目ですから抵抗なく折ることができます。

こういうわけで、天地は断裁された状態の折丁ができあがりました。一回目の折りのところはまだつながっているので、綴じ終えてから、あるいは読みながらペーパーナイフで切ってください、という趣向です。

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ワークショップでは本を綴じるための工程をできるだけたくさん盛り込んでみました。十分に説明する余裕がなかったので、言い忘れたことや簡単なアドバイスをいくつか書いておきます。

  • 表紙を作る際、芯になる厚紙を「裏側」に貼るため、位置を決めるのが難しくなる場合があります。今回のははがきサイズだったのでさほど苦労はなかったかと思いますが、大きめのものだったり、柄やデザインの都合で位置をきちんと決めたいときは、トリミングのための枠を作ると便利です。透明(半透明でも可)な下敷きやクリアファイルに、本のサイズの枠を書いて、その枠のちょっと外の部分にピンで穴を開けると、裏側から芯材を貼るときに位置を合わせやすくなります。表紙を大量に作る場合、印刷位置が同じであれば、L字型のガイドを作るという方法もあります(←これについては、指南で説明する予定です)。
  • 表紙の芯材を貼った後で、四辺を裁ち落とす定規は、残したい幅に厚紙を切って定規に両面テープで貼り付けると簡単にできます(簡単とはいえ、多少のコツはあります)
  • 表紙の芯材の角を2ミリ開けて45度に裁ち落とす定規は、45度の三角定規を2枚使って作ることもできますが、大きくなってしまうので、下敷きを45度に切って、先を2ミリぐらい切ったものを定規に貼り付ければできます(これは面倒かもしれないので、希望があればまとめて作った方が良いかもしれないです。希望があればまとめてパーツを発注しようと思います)。
  • 綴じる前に、表紙芯材の折ってある部分だけのり付けするのですが、隙間ができないようにきっちり貼ると見た目が美しくなります。へらをうまく使うときれいに仕上がります。
  • 穴を開ける台は、それこそ当日会場で作った即席のものですが、本体と同じ幅(105ミリです)なので、両端をきちんと揃えて穴を開ければ位置が揃います。実際に作る幅の台を作った方が手間なくきれいにできるでしょう。「はん・ぶんこ」の台はA4サイズの厚紙1枚から二つ作ることができます。今回作ったものは両端から55ミリ、93ミリのところに筋を入れて、両端をマスキングテープでつないだだけの簡単な仕組みです。台の下にコルクボードや段ボール、または当日ご覧になったもの(ほんと間に合わせなので知っている人だけが知っている)を貼り付けておくと机に傷がつかなくて安心です。
  • 穴を開ける工程は、当日使ったようにピンでも十分にできます。ただ、ピンだと短くて持ちにくいので、たくさん作るならば目打ちのようなものがあるとラクです。
  • 穴を開けるためのガイドも、本のサイズと同じ幅で作っておけば、穴の位置が揃うのできれいに仕上がります。厚紙で作っても良いし、透明な下敷きを必要な幅に切って作っても良いかと思います。
  • かがりの糸は、基本的に丈夫なものであれば何でも良いと思います(製本の本には麻糸と書いてありますが、せっかく背のかがり目を見せるのですから色があっても良いかなと、また糸によっては単色よりもグラデーションがあるものもあるので、綴じ上がったときに色が変わってすてきです。
  • 今回はあえて太めのこぎん刺しの木綿糸を使いました。草木染めの優しい色が良い感じでした。
  • 糸の長さは、本の縦の長さ(今回のは105ミリ)×表紙と本文折丁の数+約20センチぐらいです。今回は大体150センチぐらいでした。
  • かがりの作業の際は、机の高さよりも、なにか15センチぐらいの台(重たい本)の上でやるとやりやすいかと思います。
  • かがり台を使うやり方と違って、自由に持つことができるので、やりやすい反面、糸の引き具合や締め付けにムラができる傾向があります。基本的には台の上に載せた状態で作業するものと考えてください。クリップで隙間のところと開いたところを押さえる意味は、やってみれば納得いくと思います。やっているうちに自然に行き来できるようになってきます。
  • かがりの工程中、なかの二カ所は、「素直に進行方向に糸を引いた状態でクリップを持ち上げた時にできた隙間から入る」ということだけ覚えておけば自然に分かってきます。綴じ上がったときに目が規則的に並んでいればOKです。
  • かがりの際、糸の引き加減が一定になるように心がけましょう。最初はなかなかコツがつかめないかもしれませんが、これは「慣れる」しかないので、なんとも言えないのですが。初めのうちは「緩い」ことが多いので、ちょっときつめにすることを意識すると良いかもしれません。(逆にきつくしすぎると背が凹んだ状態になってしまうので、ほんと感覚的に身につけるしかないです)
  • 綴じ終えて、表紙ののこり3辺を包むときは、先に天地を、その後小口の順で。本の厚さ分だけなにか下に台を置いて平らになるようにして作業するときれいに仕上がります。下に敷紙をおいて、糊をつけたらそのまま敷紙ごと折り返すときれいに仕上がります。へらを使ってきっちり押さえてやると見た目もきれいですし、丁寧な仕事にみえます。
  • 表紙を包んだら、内側に本のサイズより2、3ミリぐらい小さく切った紙を貼って完成です。
  • 今回は、表紙をハードカバー仕様にしてみましたが、文庫本のようにソフトカバー仕様の方が良ければ、A4用紙を105ミリで横長になるように切って、半分に折ったものをさらに半分に折って本文と一緒に綴じるという方法もあります。これだと本全体が柔らかいので、もっと気軽に読めるのではないかと思います。
  • 普通の本と違って、背表紙がないためタイトルが分からなくなってしまいますが、A4用紙を105ミリで横長になるように切って、カバーを掛ければすむことです。
  • 背が露出していて不安定に見えますが、何かに引っかけて切ってしまうと言うことでもない限り、簡単には切れません。むしろ糊で固めてしまうよりも自由であるため負荷がかからないかなと思います。私が実際に作って、相当酷使した本でも、いままで糸が切れてしまったとはありません。
  • 今回一本の糸だけで綴じるやり方をご案内しましたが、これが特別な道具を必要とせず、どこでも綴じられるやり方だからです。かがり台がないとできないとか、固定しないとできないやり方では、工房以外でやることは不可能です。また、どこでもできるからこそ、そとでワークショップができるのです。喫茶店とかでもできるやり方なので、もう一度復習したい、あるいは挑戦してみたいという方は、復習レッスンもできます。(この綴じ方は、栃折久美子先生の本で紹介されているやり方を私なりにアレンジしたものです)
  • 綴じの前段階(印刷のための原稿を編集する方法など)について、興味がある方は、別途ご相談ください。

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