天衣無縫

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小さな本工房がつくる本は美術品や工芸品ではなく、日常の生活に寄り添えるようなモノでありたいと考えています。

書物が日常的なモノかどうかは人によって違うので、微妙なところではありますが・・・。少なくても存在としては珍しいモノではないので、あとはどの程度の関わりを持てるか、ということになるのでしょうけど。

美術工芸品としての手製本に興味がないといったら嘘になりますが、かと言ってそういったものを目指すつもりはない。手袋をしないと触れないようなモノとか、ガラスケースに収められて触れることすらできないようなモノを作っても仕方がないし。

機械製本の対極にある手製本という位置づけではなく、もっと日常的な手仕事としての本作りを目指したいなと。高級な素材を使うとか、奇を衒ったものを拵えるとかではなく、もっと普通のモノでありたい、普通だけれども手仕事(ハンドメイドという語感とはちょっと違うかな)として意味のあるしごとをしたい、と。

なんてことを日々考えながら作っているのですが・・・・・・

先日まで日本橋三越本店で開催されていた「工房からの風」から50人の手仕事展、ことし秋の本展に出展する機会をいただいたこともあり、開催前から結構気になっていていました。

告知ブログに紹介されていた作品がとても素敵で、是非とも実物を見てみたい、できるなら自分の仕事場に飾りたい!という衝動にかられ、展示初日に副業先から直行しました。

tenimuhou.jpg「天衣無縫」、国分佳代さんの作品です。

文章や詩歌などが自然な出来栄えで技巧をこらした跡がなく、完璧に美しいことをいう。また、人柄などが無邪気で素朴なさま。

ほんとうは壁に掛けたいところですが、いつでも見られるようにと仕事机の書棚スペースにおきました。

書物が並んでいるところにあるのがふさわしいかどうかは分かりませんが・・・

机(ライティングデスク)の上の4つある棚のうち、下の2つはシュティフターの翻訳書が一列に並んでいる一番大切なスペース。仕事中でも目に入ってくるので私にとっては特等席扱いです。

シュティフターは私の一番のお気に入り作家で、『晩夏』は何度読み返したか分からないくらい。ところどころ鉛筆で線を引いた跡がのこっています。

そんな中の1ページ。芸術について数ページにわたって語る場面です。

「ところで、あなたは美しさを認識する手がかりとなる特徴ということをおっしゃっいましたが、そのようなものは見つからないでしょう。これこそ、古代美術の最高の作品の本質であり、また一般的に言っても最高の芸術の本質と思うのですが、最も美しい点が、個々の部分でも個々の意図にしても、どこにも見当たらない、全体が美しいのであって、最も美しいと言えるのはただ全体だけなのです。部分はただ自然であるとしか言えません。

これって、まさに「天衣無縫」ってことだな、って。

もうひとつ重なるのが、『菜根譚』にあることば。

文章も極処(きょくしょ)に做(な)し到(いた)らば、他(た)の奇(き)有ること無く、只(ただ)是れ恰好(かっこう)あるのみ。人品(じんぴん)も極処に做(な)し到(いた)らば、他(た)の異(い)有ること無く、只(ただ)是れ本然(ほんぜん)あるのみ。

知らず知らずのうちにこういった言葉から影響を受けているのだろうし、それは大切にしなければならないのだろうなと思います。あらためて、自分が目指す手製本のカタチについて考えてみるきっかけとなった言葉です。

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