2014年1月アーカイブ

使える手製本

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小さな本工房の糸かがり手製本は、特別なところがないのが特徴かもしれません。

文庫本の半分――なので「はん・ぶんこ」と呼んでいます――という大きさは、普通の書物から見たら小さいけれども、「豆本」と呼ぶにはちょっと大きめ。どちらからみても中途半端な感じがしないでもないのですが、私はこの大きさが気に入っています。

「はん・ぶんこ」の本はA4サイズの1/8の大きさです。両面に印刷して綴じれば、1枚の紙が16ページの冊子になります。単純に4枚に切り分けて折って糸でかがっただけの代物ですが、冊子にすることでいろいろとメリットが見えてきます。

kanji2.jpg手になじむサイズで、糸かがりのため平らに開くため、読むための書物としても、何かを書き込むためのノートとしても使い勝手は抜群。背表紙がないため、一見、弱そうにも見えますが案外丈夫です。

左の写真は常用漢字表です。2011年2月に製本しました。全部で160ページ、A4用紙10枚分あります。

作業用のノートとして作ったものなので、どのページにも書き込みがしてあります。この書き込み作業、辞書や他の資料と照合しながら行ったため、何度も開いたり閉じたりの繰り返しでした。普通の文芸書のように最初から読んでいくというのではなく、辞書や便覧のように必要なページをすぐに開くというような使い方です。私の手製本の中ではかなり酷使した方ですが、糸が切れて壊れたということは一度もありません。

kanji1.jpgこちらは上の写真とは別の作業用のノートです。左は『韓国漢字音便覧』で2010年8月に製本したもの。右は『常用漢字表(韓国語音併記版)』で2011年3月に製本しました。

韓国語の方は韓国の漢字表を韻母ごとに並べて作ったもので、同じ韻の字が並ぶようになっています。こうすると日本語音との対応関係がわかりやすくなるのです。

日本の常用漢字表と照合し、常用漢字表に含まれる字だけ日本の漢字を併記してあります。写真はそのための作業用のノートです。

配列に規則性があるとは言え、日本語のリストとはまったく違うため、それこそページ間を行ったり来たり、この本もかなり酷使しました。マーカーで印をつけた数だけ、さらには鉛筆で印をつけた数だけそのページにアクセスしているということになります。

右側の本は割ときれいです。というのは、照合作業をもとに編集し直して、印刷・製本したものだからです。いくつかペンで書き込みがしてありますが、ひとまず完成した状態です。

こういった作業のための書類は、バラバラではやりにくいし、かといってステープラーで一カ所だけ綴じても、あるいはパンチで穴を開けてファイルに綴じても使い勝手はよくない、だからこそ多少手間はかかっても糸でかがるほうが良いと思うのです。

ステープラーで左側を綴じて、製本テープを貼る、これもまた製本の一つの形ですが、研究発表のレジュメみたいな使い道であればそれで十分でしょうが、書き込みには不向きです。

背を糊で固める製本という手もありますが、おそらく似たようなものでしょう(私はやったことがないので判断できませんが)。

また、ルーズリーフのように穴を開けてファイルした場合、フラットに開くので、参照するには都合が良いのですが、何かを書き込もうとすると、金具が邪魔になってしまい、これもまた使い勝手が良いとは思えません。

ファイルではなくても、リング綴じなら同様のやり方ができ、ファイルほど邪魔にはならないかもしれません。でも私はそこまで魅力は感じません。

最近流行のオリジナルノートを作るサービスはこんな感じですね。中身の紙を選んで、表紙を選んで、オプションでゴムバンドをつけたり、ポケットをつけたり、そしてリングで束ねる、そんな感じ。

ノートならそういうサービスが便利ですが、中身が印刷してある場合はどうなんでしょう?製本屋さんに持って行けばやってくれるんでしょうか?探してみないと分かりません。

で、小さな本工房の手製本ですが、単純に紙を折って、糸でかがっただけの非常にシンプルなものです。商品として作るものや、ワークショップでご案内するモノは表紙に厚紙を芯にしてハードカバー仕様にしてありますが、作業用のノートは本文よりも厚めの紙を折っただけ。

見た目はシンプルすぎて華やかさもかわいさもないですが、使えるという点では他のどのやり方よりも勝っていると自負しています。

私が最初に手製本を手がけたときは、指南書だけが頼りだったので、上製本のやり方でやっていました。ただ、そうやって作った本が自分が望んでいるものなのか、欲している形なのかと自問したときに、だんだんとシンプルな方向に進んできた、そんなところもあります。

背を糊で固めないことにより、開きが自由であること、そして本そのものが不要になった場合には糸を切ってバラバラの状態にすることができます。

糊で固めることにより得られることよりも、固めないことによって手間を省くことができる点、しなくても支障が見当たらない点を考えると、本当に必要な工程なのかとギモンに思うのです。

上製本にするときに、栞紐と花布をつけますが、花布をつけなければならない理由が見当たらない。あればそれだけ見た目は立派だけれども、つける手間もかかるし、ボンドの加減が難しい。少ないと本文から離れてしまって浮いた感じになるし、多いとはみ出て花布がてかってしまう。そもそも100ページにも満たない本に花布が必要なのか、折り丁が二つや三つの絵本に花布があっても仕方がないのではないか。

となると、最後は表紙そのものにもギモンが沸いてきて、ハードカバーの表紙でなければならない理由も見当たらない。もともと文庫本のように気軽に持ち歩くことができて、どこでも読めるようなモノが欲しかっただけなので、立派な上製本である必要は全くない。むしろハードカバーではあのサイズの良いところを生かすどころか殺してしまうようにも思える。だったらもっとシンプルにしてしまいましょう、そんな感じです。

ハードカバーをやめると、いろいろと気持ちがラクになります。小口をきれいに切りそろえる化粧裁ちもしない、本文と表紙をつなぎ合わせる見返しも要らない。

上製本だったらいくつもの工程を経てようやく完成というプロセスのうち、相当部分を省くことができます。基本的に紙を切って折って、穴を開けて糸でかがるだけ。

上製本のように背固めをして寒冷紗で補強して、栞ひもをつけて、花布を貼り、見返しをつけて、それから表紙の厚紙を切り出して、貼り付けて、周囲を切って、折り込んで、最後に貼り合わせてプレスして・・・・・・といった作業を全部やろうとすると手間がかかるし、あとの作業に行けば行くほど難易度が上がってきます。その頃にはもううんざり、ってことだって考えられる。もちろん、それだけやれば達成感はひとしおだとは思いますが、そこまで苦労することもないのでは?ってことを提案したいな、って思います。

上製本を目指すのは全然悪いことではないし、それはそれで意味があることだとは思います。でも、最初から布装とか革装とかを目指したところで、それはだいぶ先のことになるだろうし、それにふさわしい中身があるかどうか、どんな場面で使われるのか、そんなことも含めて考えないと。

表紙素材によって松=革、竹=布、梅=紙みたいな考え方もあるかもしれないけれども、別に革や布でなければならない理由でも無い限り、紙で十分だし、背伸びする必要も無いと思うのです。

小さな本工房がマーケットやワークショップでご案内するのは、普通に使うための本やノート、そしてその綴じ方です。洋装本であれ、和装本であれ、やり方を覚えてしまえば、針と糸だけで綴じることができる、そういった技術です。

和装本は、軟らかい和紙だからこそあの綴じ方が良いのであって、コピー用紙などの一般的な紙を同じように綴じても使い勝手がよいとは言えません。でも、書類を整理するという意味で考えたら、厚さも変わらず、バラバラになることもないし、ステープラーで綴じたものよりもずっと丈夫なので、使い勝手は遙かに勝っています。日常の紙のほとんどが洋紙であっても、和綴じが生かせないわけではない、このやり方をご案内しようと考えています。

手製本イコール上製本、という見方もあるかもしれませんが、必ずしもそうである必要はないだろうし、むしろ日常的なものと考えた方がもっと愉しいだろうし、役に立つのではないかと思います。

糸かがり指南

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新しい年が始まりました。昨日と今日とでなにが変わったわけでもないのですが、気持ちは新たに。今年もよろしくお願いいたします。

さて、昨年末に三省堂書店さんの神保町いちのいちで手製本ワークショップをしました。

和装本と洋装本の二つの講座を準備したのですが、予想以上に洋装本の方が人気であることが分かりました。

この洋装本ですが、製本の教科書にあるものとは同じではないため、ちょっと混乱するかもしれません。

一番の特徴として、見た目が洋装らしくない点があげられます。背表紙がなく、糸でかがった部分が見えるようになっているので、ちょっと離れてみると和綴じのようにも見えます。

この綴じ方のメリットは、どのページも平らに開くということです。一般的な書籍でも、糸を使わない無線綴じではここまで開くことは考えられませんし、糸かがり製本であっても、背表紙がついたものだと平らに開くってほどではない。これは実際に手にとって確かめていただくのが一番なのですが、なかなかその機会もないようで。

それから、製本する工程で、糊を使いません。ハードカバー仕様にするときは表紙に糊を使いますが、もっとシンプルに綴じるのであれば、表紙は厚めの紙を折っただけ、一本の糸と針があれば綴じることができます。

糊を使わないメリットは、仮に糸が切れた場合でも綴じ直すことができること。通常、かがったあとで別に表紙をつける場合は、背の部分を糊で固めますが、この様式の場合はなにもしません。

実際に糸だけで綴じた本をノート代わりに使っていますが、これまで糸が切れて壊れたことはありません。仮に切れたとしても、簡単にかがり直すことができます。糊を塗ってしまうと、修理が難しくなると思います。

逆に、不要になった場合は、糸を切ってしまうことでバラバラにすることができ、紙だけを再利用することも可能です。「はん・ぶんこ」の場合、A4洋紙を4等分に切って折ったものを使うので、化粧裁ちもしませんので、ゴミが一切出ない、このことも強調してよいかと思います。

さて、ワークショップでは、時間の制約もあるため、とにかく一冊完成させることが目的となってしまい、実際の手順について十分に納得できるような説明ができませんでした。

manual.jpgなので、復習用の資料と教材を作ってみました。かがり方を覚えれば、あとは白紙を綴じただけのノートでも、あるいは内容のある書物でも自力で製本できるようになります。慣れるまでに何度か練習してみてはいかがでしょうか。

まず、手順を示したshinan.pdfseihon.pdfを保存し、印刷してください。
A4用紙に「原寸大で」印刷します。プリンターによっては周囲が一部欠けるかもしれませんが、支障はありません。

教材用の紙は全部で4枚あります。それぞれ1から4まで番号がついています。その番号が外側になるように2回折って(あるいは切ってしまっても構いません)、最後に1、2、3、4の番号が外側になるように折ってください。折った内側(黒で矢印が印刷してある方)に小さな「点」がある(それぞれ4つ)ので、そこに穴を開けて準備完了。

かがりの糸は、この場合は50センチから60センチ程度準備してください。

指南にはどの折丁のどの穴から入ってどこから出るのかが記号で書いてありますので、それを頼りに進めてください。

shinan.jpg最初のうちは緩くなってしまうかもしれませんが、慣れればある程度きっちりとかがることができるようになります。糸を引きすぎると紙を切ってしまうかもしれませんが、何度か失敗するのも勉強のうち、引き加減は言葉で説明するよりも、実演でみせるよりも、自分でやって覚えるしかありません(突き放したような言い方ですが、そういうものです)。

まずは、指南と教材をダウンロードできるようにしておきました。いつになるか分かりませんが写真か動画でご覧いただけるように準備を進めておきます。

わかりにくい部分もあろうかと思います。ご質問などがありましたら、お気軽にお問い合わせください。

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