2013年5月アーカイブ

糸かがり製本指南

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創作和紙のショップでの「糸かがり豆ノート」の製本体験

ワークショップに参加されたお客さんがあとから自力で製本できるように、指南書をつくろうと考えていました。

でも、よくよく考えたら、復習よりも練習用の教材の方が面白いかも、って思い至り、少しずつ作業を進めています。

この指南書、それなりに工夫が盛り込まれています。紙を折り、「かがり」のための穴があけてあります。作業工程を説明するために、それぞれの穴に番号を振り、糸を通す順番と方向を表示しました。

言葉で説明するだけでなく、写真でご案内します。かがり作業では両手を使うので、自力で写真を撮ることができませんが、先日、実際の作業工程の写真を撮っていただきました。

糸でかがる方法は一つだけではありません。

小さな本工房の手製本は背表紙がなく、かがりの部分がむき出しの様式です。普通の書物やノートと比べると一見不完全なカタチのようにも見えますが、実は、この方がどのページも平らに開くので、書き込みをするためのノート、スケッチブック、あるいはスクラップブックなどに適しているのです。

通常、上製本をつくるときは支持体として麻ひもやリボンを使います。でも、本の大きさがそれほど大きくない場合や、ページ数がそれ程多くない場合は、支持体なしで一本の糸だけでかがることも可能です。

特別な道具類を必要としないので、あとから自力で製本できるようになります。自分でやってみたくても、特別な道具がないとできないようだと、やる気がうせてしまいますので、できるだけ身近なものだけで完成させられる方法を紹介します。

最初の部分はちょっとややこしいと感じるかもしれませんが、分かってしまえば難しいことはありません。最初の3折、あるいは4折まで一度やってみれば、あとは同じことの繰り返しなのです。

練習用の教材は4折で64ページにしてあります。この教材で指示通りに糸でかがって、最後にペーパーナイフで切ると一冊の本になるという仕組み。1枚の紙に両面印刷して折ると16ページ分の折丁ができます。この仕組みもご覧いただくことができます。

完成した本は各工程の説明がテキストと写真で紹介していますし、製本に関する他の手順や美しく仕上げるためのコツなども紹介してあるスグレモノです。

美しく仕上げるためのコツ、これは糸をどのくらい引っ張るか、だと思います。

これは実際にやってみないと分かりにくいのですが、まず練習をすることにより大体の感覚をつかんでいただけるはず。その後で「作品」を仕立てます。

この糸かがり指南書、まだ製作中ですが、6月のワークショップでお披露目の予定です。

せっかくなので、「はん・ぶんこ」判の指南書とあわせて電子版も準備しようかと思案中。小さな本工房のサイトでご案内する予定です。

古書+香草

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先日の鬼子母神手創り市、当日の朝にカタチになったものがあります。

だいぶ前から思い描いていたもの、そしてちょっと前に簡単な試作品を作り、それを応用したものです。

lavender1.jpg洋古書の画像データを台紙に貼り、そこにドライのラベンダーを糸でとめてみました。

デジタル化された洋古書の画像データをつかって、小さな本に仕立てる「アナログ化」をしているのですが、本の形に戻すだけでなく、データそのものを別の形にできないか、そんな思いつきから。

本物の本が手元にあるのですが、さすがにそれを切ってしまうわけにもいきません。

コピー、スキャンするにしても、むりやり押さえつけたら本が傷んでしまう恐れがあるので、だったらデジタル化されたものをお借りして......

台紙に貼るのは手製本で表紙を作るときと同じ手順、難しいことはありません。

その上に昨年収穫したラベンダーを糸でとめます。1年も経っているので花の色はグレーっぽくなってしまいましたが、古書とのバランスの点ではかえっていい感じです。刺繍糸でとめる作業をしているときに花がちょっとこぼれてしまい、そのたびに香りがたっていい感じです。

押し花として作ったものではないので、立体的で、これもまたいい雰囲気。立体的なフレームに納めたら素敵な作品になりそうです。

手元にある本、Richard Jefferies というイギリスの文筆家の作品。

タイトルは "Amaryllis at the Fair" 1887年の本です。

20年ぐらい前、岩波文庫の『野外にて』という本に出会い、それがきっかけでJefferies の自然随想に関する書物を集めました。

自然を言葉でスケッチしたような文章がたくさんあり、いつか言葉によるスケッチブック風の本を作ってみたいなと考えていました。

この本はエッセイではなく小説ですが、このページには8回も "lavender" が出てきます。なので昔読んだ時に付箋をつけてあったのです。

lavender2.jpgこの写真は、手元にある原書、そして試験管に入ったドライのラベンダーです(本当は試験管ではなく紅茶が入っていた瓶です)。

古書と香草の組み合わせっていいなぁ、と、ずっと前から思っていました。そして、それがいい感じで結びつけられないかと考えていたのですが、ふとしたことで形になったわけです。

大学では語学を専攻していました。卒業後ハーブに夢中になり、その後手製本を始めて。それぞれ全く関係がなかったものが、あるときひょんなことから結びついてなにか新しい作品が生まれる、こういうのって楽しいですね。

ちなみに大学で専攻していた外国語とハーブとはほとんど関係がありませんし、いまは全く使うこともありません。卒業してからハーブのために(資料を読むために)他の外国語の勉強をしています。

古い植物図鑑(19世紀のものです)や植物民俗誌に関する洋古書、これもちょっとしたコレクションですが、実際に読む時間も、それ以上に読む能力も足りなくて、いまは書棚のインテリア。古書が似合う古風な書棚が欲しいけれど、事務用のガラス戸つきのスチール棚に収まっています。

19世紀の終わりごろに出版されたイギリスやドイツの植物民俗誌に関する書物です。

文学作品の中に出てくる植物(とくに香草類)をあつめて、スクラップブックあるいはスケッチブックを作ってみたいと、ずっと前から考えていました。もちろん、そのためには作品を読んで、探し出すことから始めなければならないのですが、能力的に無理があるので、最初に書いたJefferiesのネイチャーエッセイの中から拾い出してみようかと。

それで、最初の写真の作品が出来上がりました。

このページのテキストを Project Gutenberg のサイトから借りてきました。

Another time there would come a letter from one of the Flammas in London. Could they spare a little bag of lavender?--they grew such lovely sweet lavender at Coombe Oaks. Then you might see Mr. and Mrs. Iden cooing and billing, soft as turtle-doves, and fraternising in the garden over the lavender hedge. Here was another side, you see, to the story.

Mrs. Iden was very fond of lavender, the scent, and the plant in every form. She kept little bags of it in all her drawers, and everything at Coombe Oaks upstairs in the bedrooms had a faint, delicious lavender perfume. There is nothing else that smells so sweet and clean and dry. You cannot imagine a damp sheet smelling of lavender.

Iden himself liked lavender, and used to rub it between his finger and thumb in the garden, as he did, too, with the black-currant leaves and walnut-leaves, if he fancied anything he had touched might have left an unpleasant odour adhering to his skin. He said it cleaned his hands as much as washing them.

Iden liked Mrs. Iden to like lavender because his mother had been so fond of it, and all the sixteen carved oak-presses which had been so familiar to him in boyhood were full of a thick atmosphere of the plant.

Long since, while yet the honeymoon bouquet remained in the wine of life, Iden had set a hedge of lavender to please his wife. It was so carefully chosen, and set, and watched, that it grew to be the finest lavender in all the country. People used to come for it from round about, quite certain of a favourable reception, for there was nothing so sure to bring peace at Coombe Oaks as a mention of lavender.


デジタルデータがあると、テキストの中から特定の語を探すのがラクですねぇ......昔は書物を読みながら用例を拾い集めてカードを作るという作業をしていたのが、いまではこんなことはあっという間。確かに便利な世の中です。

いや、便利であっても、探す愉しみというのは取っておきたい気もします。そんなわけで、少しずつですが「古書+香草」でなにかを作っていく予定でいます。

手製本のはじまり

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連休中、三か所のハンドメイドマーケットに出展しました。

天気も良くて、どこも大賑わい。出展者作家さんやお客さんとお話したり、商売そっちのけでほかの出展者さんの店を見て廻ったりで、出展者なのか見に来たお客さんなのか分かりませんね。

一人で出店しているので、あまりで歩くわけにもいかず、でも、ほかの作家さんも興味あるし......自分が二人いればいいのにって思ってしまいます。

試作品のスクラップブックです。文庫本サイズで88ページ、表紙は裏打ちしたカットクロスです。

まずは自分で使ってみて、使い勝手と使い心地を確かめてから商品化するつもりでいます。

自分で納得できないものを商品にするわけにはいきまませんので。

実際にマーケット会場で知り合いの作家さんの名刺を頂いて貼りつけてみました。

実際に使ってみると、予想以上に使い勝手が良いことがわかりました。

かがり糸の太さの分だけ綴じた部分が膨らんでいるのですが、名刺やカードを貼ることによってその厚みが均等になるような気がします。糊で綴じたものや、リング製本のものよりもずっと使いやすいです。いつものように一本の糸だけでかがり、背表紙がないので、どのページもフラットに開きます。そのため書き込みもしやすいのです。

サイズは文庫本と同じA6にしてみました。一般的な名刺サイズは55ミリ×91ミリですから、「はん・ぶんこ」サイズ(105ミリ×74ミリ)だと名刺を縦にしか貼ることができませんが、文庫本サイズなら縦にも横にも貼ることができます。一般的なスクラップブックはA4 やB5など大きめで、持ち歩くにはちょっと不便ですが、このサイズは文庫本や手帳を持ち歩く感覚で使えるので使い心地もいいのではないかと思います。

これは今後商品としてマーケットでお求めいただけるように準備したいと思います。まだ考えているだけの段階ですが、表紙を他の作家さんとのコラボで仕立てる形にできたら面白いかもしれません。

さて、

マーケットでは、お客さんに気づいてもらえるように、洋古書のミニチュア(豆本)や切手サイズの「豆かるた」を目立つように並べていますが、製本を始めたきっかけはこういったものではありませんでした。

目立ちはしませんが、「はん・ぶんこ」を収めた棚には実際に自分で使うための本やそのための試作品が何冊か並んでいます。自分用なので、カバーやタイトルもいらないのですが、数が増えてきて、どれがどれだかわからないので、シンプルなカバーをつけて中身がわかるようにしてあります。

手書きで書かれたタイトルの中に、「常用漢字表」とか、「韓国漢字音便覧」とか「仏語動詞活用便覧」などと書かれたものが数冊、そしてこれらはどれも付箋がついていたり書き込みがしてあります。

もともと、これらは商品のつもりで並べているわけではなく、実際に作業用のノートとして作ったものです。すでにあちこちで書いているように、これらの本は、自分が欲しいと思ったものがなかったから、あるいは市販のものをちょっとアレンジして、さらに使い勝手が良いものにできないか、そんなきっかけで作ったものです。

持ち運ぶのに邪魔にならないコンパクトなサイズ、小さすぎず大きすぎず、手のひらにちょうど収まる絶妙な大きさで、開けば文庫本やはがきと同じくらい。なので、ちょっとした便覧などにピッタリなのです。

糸かがりで、平らに開くため、書き込み作業にもストレスがありません。もし糊で綴じられた無線綴じの本だったり、あるいはリング製本だったら、読むときはよくても、書き込みには向かないでしょうね、あるいはコピーするとか、スキャンするときも影が出てしまいます。

この書き込みだらけの作業ノート、結構酷使しましたが、今のところ使っていて糸が切れたとか、本自体が壊れたとか、そういったことは一度もありません。思ったよりも丈夫なことがわかりました。逆に、不要になった場合は、かがり糸を切ってしまえばページをばらすことができるので、糊を塗るときに下に敷いたりといった再利用も可能です。ついでですが、はん・ぶんこサイズの作業用ノートは化粧裁ちもしないので、まったくゴミが出ません。これも優れた点だと思います。

ちょっと説明が長くなってしまいましたが、先日これらの本をご覧になったお客様が、「受験生のための本として使えそう」とおっしゃっていました。そう、まさにそうなんです!と叫びたい気持ちになりました。日頃考えていたことを、お客さんの側から指摘してくださり、やっぱり同じことを考えている人はいるんだと、驚きと嬉しさでいっぱい、小さな本工房の宣伝部長をお願いしたいくらいの気持ちです。

私が手製本を始めたのは10年ぐらい前。なので、別に受験勉強とはまったく関係がないのですが、そのとき外国語を独習していて、暗記、記憶するためのものや、参照するための便覧のようなものがあったらいいなと、そんな思いから始まったのです。

始めのころに作っていたのは、16ページのシンプルなものでした。教材の中の重要な部分だけを抜き出し、時折参照することができるもので、「栞ノート」と呼んでいました。「はん・ぶんこ」サイズで16ページですから、A4用紙一枚分、これを1/4に切って折っただけのものなので、かさばらず本の栞のように使えます。で、重要事項をまとめてあるので、その場で参照することもできるし、ノートのように書き込むこともできるという「スグレモノ」です。

これって、受験生もそうですし、資格試験の勉強をしている人にとっては、とても役立つと思います。私は専攻が語学系だったので、外国語の単語集や例文集、活用表などの文法便覧をあれこれ試作してみたのですが、もちろん他の科目や分野であっても同じことではないかと思います。

教科書や学習参考書のような「主役」にはなれませんが、「学習支援書」といった感じ、本とノートとの中間の役割として。電車の中で単語の暗記に励んでいる受験生を見ながら、あの教材が「はん・ぶんこ」だったら喜んでもらえるのではないか?なんて考えています。

いま、糸かがりの冊子式だけでなく、経本折りのはん・ぶんこも試作中です。冊子だと一度に見ることができるのは見開き2ページ分だけですが、経本折りでつないでしまえば、必要に応じて広げることができます。『百人一首暗記帳』も冊子よりも、蛇腹折にした方が使い勝手が良いようですし、活用表の類も、どの部分が他と違うのか、これをわかりやすくするために、綴じたものではなく伸ばして広げられるものにしてみようかと。それに全体を俯瞰できるように大きめのチャートを作ってミウラ折にしてつける。

全体と個々の情報がわかりやすいように整理された小さな手のひらサイズの便覧、これは良いかもしれません。

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