2012年12月アーカイブ

手製本である理由

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早いもので今年もあと数時間、テレビで放送中の「第九」を聞きながら記事を書いています。

ちょうど一年前は百貨店催事で年末の数日間はバタバタしていました。12月30日と31日が当番で対面販売を行うほか、そこで「実演」をするなど、めったにできない経験をしました。そこでお会いしたお客様から後日ご注文を頂いたり、秋の豆本フェスタ3で声をかけていただいたり、忙しくも愉しいイベントでした。

鬼子母神の「手創り市」は丸二年、代々木八幡の青空個展もようやく1年になりました。いつも商売っ気なしで、ほかの出展者さんやお客さまとおしゃべりばかりして過ごしています。「手製本」や「豆本」での出展者はほとんどいないため、珍しがっていただけるのはありがたいことです。

売るための「商品」として準備すればもっと稼げるのに、なんてほかの出展者さんから言われることもしばしば。分かってはいるのですが、なかなか準備が追いつかないこともあって、サンプルの展示ばかりになってしまいます。

たまに「商品」のつもりで準備しても、思ったほど売れなかったり、そんなときは気持ち的にはちょっとへこみますね・・・なので、「売るために作る」のではなく、「お客さんが欲しいといってくださるものを作る」ほうが良いなと思っているのですが、それにはまた逆のプレッシャーもあって。

お客様からご依頼を頂いて製本する場合、表紙にする布や紙をお預かりする場合もあり、またイメージをお聞きして、それに合わせて本の形に仕立てる場合もあります。とくに素材を預かっての製本の場合は、失敗が許されず、相当気を使うことになります。

手製本の作業って、後に行けばいくほど失敗の危険性が高まるような気がします。

印刷して裁断し、折ってかがるくらいであれば、やり直しができます。問題はその先で、かがり終えた後に化粧裁ちをする、その時に微妙にずれてしまって、当初よりも小さくせざるを得なくなるとか、表紙と本文とのバランスが微妙に違っていたとか、最後の最後に糊をいれたら見返しがずれたとか、糊の水分が多くて本文がふやけた感じになってしまったとか。

最近は、小さな豆本に限らず、文庫本程度の本でも背表紙がない状態で仕立てています。

豆本に関しては特にそうですが、背表紙があると、たとえ丸背にしても開くのに多少の力が要ります。綴じた部分まで完全に開くわけではないので、本文をレイアウトする際にどうしても余裕が必要になり、ただでさえ狭い紙面にテキストを十分に配置できなくなってしまいます。

なので、本のサイズは小さくても、「読みやすさ」を優先し、本文は可読性の高いフォント、サイズで組み、どのページも平らに開くように糸でかがります。これは自分で使うための作業用のノートなどをご覧いただければ、理解していただけるのではないかと思います。

小さな本工房の手製本は、基本サイズが文庫本の半分、なので「はん・ぶんこ」と呼んでいるのですが、これは使い勝手、使い心地がよいという点で、市販の書物よりも気に入っています。

A4用紙1枚に両面印刷して16ページ分、化粧裁ちをしなければゴミも出ません。

機械製本で大量に作られたものとは違う何かがあってこその手製本。

何百部、何千部、何万部もつくるのではなく、一冊単位での作業ですから、すべてが全く同じというわけにはいきません。もちろん、できるだけ効率的に、また正確に作業するための工夫はあるのですが、この点をどう克服していくか、このあたりが今後の課題になりそうです。

さて、本の形とは別に、中身のほうですが、小さな本工房は「製作系」であり、「創作系」ではないので、オリジナルのコンテンツを提供できるわけではありません。創作も製作もこなすには才能と技術の両方が必要ですが、二兎を追うわけにはいかず。ただ、創作系の作家さんとのコラボなどをすすめていけたらと考えています。

手製本である理由がほかにあるとすれば、機械で対応できない小ロットの製本が可能であること。1冊だけとか10冊、100冊程度の部数を専門業者に発注するのは難しいでしょうが、こういったものこそ手仕事の領域といえるのではないかと思います。

工房通信(12月)

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先日の雑司ヶ谷鬼子母神の手創り市。

12月にしてはそれほど寒くもなく、また大きな木の下でしたが午前中は陽がさして、愉しい一日を過ごすことができました。

小さな本工房のお客さんは老若男女さまざま。小学校にあがる前の小さなお子さんから年配の方まで。マーケットに来ているすべてのお客さんが足を止めるわけではなく、知らずに通り過ぎてしまう人もたくさんいるのですが、そんな中で立ち止まって、おしゃべりをしたり、作品をご覧頂いたり、そんななかで新しいアイデアに繋がるヒントを頂くこともあります。

小さなお子さんが「はん・ぶんこ」サイズの洋古書ミニチュア本を手にとって見ている姿が何ともほほえましくて・・・大人の手には小さい本という感じしかないのですが、ちいさな子どもが持つと不思議とぴったりなんですね、なんだか新鮮な驚きでした。そういえば、以前ご依頼を頂いて作ったもっと小さな本はドールと一緒に飾りたくてとのことでした。なんとなく分かるような気がします。

小学生ぐらいの子どもが百人一首の本や暗記帳に興味を持ってくれるのも嬉しいことです。『百人一首暗記帳』はもともとは自分の暗記のために作ったものですが、小学生が欲しいと言ってくれるのであまり高い値段をつけるわけにもいかず、手間暇の割には安くしています。

あれこれ本を眺めて、いちど他の店に行ったかと思ったら戻ってきて、これが欲しいって言ってもらえると、単純に嬉しくなってしまう。大事なお小遣いで買うわけだからと、内緒で安くしてあげたり。

小さいときから書物に親しんで、本好きになってくれたら嬉しいし、それでもって小さな本工房のファンになってくれたらありがたいし。

さて、この日、手創り市の直前に試作した経本折りの『百人一首暗記帳』をお披露目。最初に作ったのは一面の幅が5センチなので、百首分並べると5メートルにもなります。そのあと作ったのは3.5センチですから、それでも3.5メートル。

お客さんに一方を持って頂き、目の前で伸ばしてみせたり、使い勝手の良さをアピールしたり。

さて、この蛇腹折りですが、等間隔で山折り谷折りにするにはちょっとしたコツがあります。

幅35ミリの場合、A4用紙横置きにして本文を印刷します。

35×8で280ミリ、A4用紙のサイズは297ミリですから、左右に余白ができます。そのうちの一方は糊付けするために残し、もう一方は裁ち落とします。

最初に糊代の部分を折って、本文8面だけの状態にし、まず真ん中で半分に折ります。次に真ん中の線を基準にして左右を更に半分におると、正確に4等分されます。この状態で一辺が70ミリの正方形になります。この後で70ミリをそれぞれ半分に谷折りすれば蛇腹になるわけです。

これを最初に全部つないで、それから35ミリ幅で折っていくのはかなり手間がかかるでしょうし、おそらく微妙にずれが生じるのではないかと思います(わたしはこの方法ではやったことがないので、勝手な想像です)。

1/2、1/4、1/8と半分、また半分、更に半分と折っていけば案外簡単に、しかも正確に折ることができます。折るためにちょっとした作業台とへらがあれば作業は効率良く、美しく仕上がります。

こうして小さなユニットを作って、最後に糊でつなぎ合わせます。糊付けにもコツがありますが、しわになりにくいスティック糊で大丈夫でしょう。糊がはみ出ないように(はみ出ても本文に糊が残らないように)するためのコツもあるのですが、文字で書くのは大変なので、機会があれば写真かなにかで。

これまで糸かがりの冊子式の本ばかり作っていましたが、経本折りでも「実用的豆本」の可能性が見えてきました。

「はん・ぶんこ」サイズの折り本、手に馴染む大きさで、必要に応じて拡げて見渡すことができるのは大きなメリットです。文法便覧や活用表などは相互に見比べることができた方が勝手が良いので、いちどこの形にしてみようかと思います。

手製本だからできること、手製本にしかできないことをあれこれ考えて、形にしていけたらいいなと考えています。こんな本が欲しい、こうしたら使いやすいかも、といったアイデアがあったらお聞かせ頂けると嬉しいです。

暗記帳

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小さな本工房の『百人一首暗記帳』を新しい形にしてみました。

従来のものは224ページで糸かがり製本でしたが、新しいものは冊子式ではなく経本折りです。一首あたり35ミリ、百首並ぶと3.5メートルになります。先に試作としたものは縦72ミリ、横50ミリなので、こちらは5メートル、全部を広げることは滅多にありませんが(そんな場所もありませんし)、なかなか壮観です。

最初の暗記帳は「決まり字」から取り札を覚えるためのものでした。今回のものは取り札を見て「決まり字」を言えるようにするのが目的です。

限りなくシンプルにし、1枚札(むすめふさほせ)、2枚札(うつしもゆ)の順番で並んでいるのは同じですが、より分かりやすくするために帯で色分けしてみました。

あとは「決まり字」と札の画像を配置しただけなので、ひたすら暗記に専念することができます。

経本折りにすることで、冊子式にはないメリットがいろいろと見えてきました。

まずは必要な分だけ広げられること。

たとえば「た」で始まる歌は6枚ありますが、「たか」「たち」「たご」「たま」「たき」「たれ」と横一列に並ぶので、暗記する際に横の繋がりを意識的に見比べることができます。

それから、冊子式よりもめくりやすいようです。糸かがりの暗記帳もページの開きは良いのですが、この点は経本折りの方が優れているようです。

前からでも後ろからでも使える(この場合は右からでも左からでもということになるのかも知れません)のもメリットの一つ。

これは暗記帳なので一面一項目ですから、文章中心の物語のように右から左へ読んでいくわけではないので、最後からでも途中からでも、ぱっと開いたところから反復することができます。

この点は冊子式でもおなじなのですが、同じように横に伸びたものでも巻子本では無理なので、蛇腹折りの利点といえると思います。

全長が3.5メートルもあるので、ちょっとあそんでみました。

ぐるっと輪のように広げてみたところです。これはA4用紙横幅で印刷したもの(8面単位)でつなぎ合わせていますが、A4横を横に2枚分つないだ大きさ(210ミリ×594ミリ)で印刷すればつなぐ手間は半分になります(その代わりA1用紙を210ミリ幅でカットすることと、16折りにする手間はかかりますが・・・)。折る手間を考えたら、8面分ぐらいが一番楽かも知れません。

小さな本工房の定番サイズ「はん・ぶんこ」の4分の1で、大きさとしては非常に小さい部類に入るのですが、使い勝手がよければサイズにこだわる理由もなく、経本折りの定番サイズにしても良いかもしれません。

「暗記帳」ということで考えたら、以前作った「フランス語動詞活用便覧」や「ロシア語変化表」などにも応用できそうです。隣り合ったページを見比べるだけでなく、離れたページでも簡単に並べる事ができる、だとすると、活用表などの類にはぴったりなのかも知れません。

文芸作品などのテキストではないからこそ可能な使い方。「実用的豆本」に新しい形が生まれそうな予感です。

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