2012年4月アーカイブ

工房通信(4月)

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遅くなりましたが、工房通信の4月号です。

最近ちょっと忙しくしており、工房作業が停滞気味です。年末年始の百貨店催事の直後にご依頼を頂いた豆本をようやく納品しました。これはちょっと極端な例ですが、他にもいくつかお待たせしているものがあったり、納品期限が間近に迫っているものもあったりで、すこし気合いを入れて取りかからなければなりません。

明治大学図書館の企画展は5月20日までです。学外者でも自由に立ち寄って見ることができるスペースですので、お時間があれば是非ともご覧ください。

展示してある「対訳小倉百人一首」豆本は全部で14冊あります。小さな本工房が蒐集した百人一首の翻訳本を共通のレイアウトで本に仕立てたモノです。翻訳書の蒐集から入力作業、印刷用の原稿作成、そして製本まですべて小さな本工房の手仕事です。

この14冊は本文紙と表紙とを一本の糸で綴じてあります。背表紙が無く、糸でかがったところが見えます。普通の書物は本文紙をかがった後で表紙をつけるので、この部分を見る機会はほとんどありません。本当はこの部分もご覧頂きたいのですが、これでは中身がなんなのか分からないので、タイトル(翻訳者)が分かるようにカバーを掛けてあります。

見たところ和本のようでもあり、かといって和装本というわけでもない・・・そういった区別自体がどうでも良くなってきました。むしろ、和と洋のいいとこ取りで、今後も「和材洋装」を求めていきたいと考えています。

本文は書籍用紙にインクジェットプリンターで印刷しています。黒100%でなく、80%ぐらいなのもこだわりのひとつ。クリーム系の紙にグレイの文字なので、真っ白のコピー用紙に真っ黒の文字を印刷したものよりもやわらかく、目にも優しいのです。

目に優しいと言えば、文字の大きさも一般の書籍とおなじくらいで組んであります。同じものを更に半分の大きさ(A8判、52ミリ×74ミリ)で作ったこともありますが、無理矢理文字を収めようとしたため、読めないことはないけれども読みにくいものになってしまいました。そんなわけで、ただ「小ささ」を追求することはせずに、そのかわり、きちんとした書物を作ることを目指すことにしました。

そもそも手製本のきっかけが、使い勝手が良いものが欲しいというものだったので、大きさや本文紙の種類、印刷の加減、そして製本の様式など、既成の概念にとらわれずに作ることにしました。

手製本だから可能なこと――一般の書籍にはないもの――を追求できたらいいな、と。かといって美術品のような「一点もの」ではなく、普通に「使える」ものをめざします。

「使える」本、ってなんなのかわかりにくいのですが、要は気軽に持ち歩くことができて、それなりに役立つもの、ってところでしょうか。これまでもあちこちに書いたように、小さな本工房の原点は「語学系豆本」、「実用的豆本」でしたから、最初に中身があって、それに見合った形を作り出す流れでした。

暗記用の例文集や文法便覧、確認の為の漢字便覧、外出先でも読みたい随筆などを使い勝手の良い仕様で本に仕立てることから始まったわけで、それにあった大きさや体裁を追求した結果が「はん・ぶんこ」サイズの糸かがり本です。

もし、「欲しい」ものが実際に商品化されていて店で売られていたとしたら、わざわざ手作りする必要なんてないわけで、市販されているものと同じものを作ろうと思ったって、それにかなうわけがありません。手製本には手製本なりの価値が必要です。これについてはいろいろと考えて見る必要がありそうです。

先日の鬼子母神手創り市で、たくさんのお客さまに小さな本工房の手製本を見ていただくことができました。マーケットでは、その場でお渡しできるような商品がわずかしかなく、ほとんどが自分用に作った試作品だったり、サンプルばかりでしたが、ちょっとした工夫に気づいてくださるお客さまが多く、作りがいを感じます。

本のようなノートのようなもの(つまり、冊子になってはいるけれども、各ページにちょっとだけテキストが印刷されているもの、でもページのほとんどは空白なのでノートとしても使える・・・テキストは百人一首の英訳です)や、表紙の部分を封筒のように作ってあるもの(なかにカードを忍ばせたり、文香を入れて本が薫るようにすることもできます)など、ちょっとした遊びも理解していただけたり。

これらは今後、完成された商品としてお披露目出来るかも知れません。

マーケットはものを売るだけの場ではなく、お客さまとおしゃべりを楽しみながら、新しい作品について練り上げていく場でもあるような気がします。そこにおいてあるサンプルは、話のきっかけ作りになるようなアイテムなのかも知れません。

小さな本工房の次回のマーケット出店は5月6日の代々木八幡手作り市です。それまでには、なにか目新しいものを準備できたらいいな、と思っています。

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